スーパーのキャッシュレス専用セルフレジで生まれる「並んだのに」の不満と運用の見直し方

スーパーのキャッシュレス専用セルフレジで生まれる「並んだのに」の不満と運用の見直し方

ニュースの概要

マイナビニュースの連載漫画「本当にあった『キャッシュレス決済』体験」の第163回が公開された。今回の舞台はスーパーである。キャッシュレス専用のセルフレジの列に並んだのに、という場面から物語が始まる。タイトルの末尾が「……」で結ばれている通り、読者が「あるある」と苦笑いしそうな展開が待っているようだ。本稿では漫画の結末そのものには踏み込まず、この題材が映し出す現場の問題を取り上げる。専用レジはレジ待ちを減らす切り札として増えてきたが、客にとっては「どの列に並べばよいか」「自分の支払い方法は使えるか」という小さな迷いが積み重なる場所でもある。一つの体験談として読み流さず、店と客の双方にとっての設計課題として考えてみたい。

引用元: 本当にあった「キャッシュレス決済」体験(163) 【漫画】スーパーでキャッシュレス専用セルフレジに並んだのに……(マイナビニュース)

分析・見解

専用レジは待ち時間を減らすが、客の迷いを増やす

キャッシュレス専用のセルフレジは、店にとって導入しやすい仕組みである。現金を扱わないので、釣り銭機が要らない。機器は小さく安くなり、現金の補充や回収、締め作業の手間も減る。

その一方で、客は列に並ぶ前に「自分の支払い方法はここで使えるのか」を考えなければならない。判断を誤れば、最後尾からやり直しである。今回の漫画のタイトルにある「並んだのに……」という徒労感は、この入口での迷いから生まれやすい。経済産業省の集計では、キャッシュレス決済比率は2023年に39.3%、2024年は4割を超えた。利用者が増えたぶん、専用レジを使える人と使いこなせない人の差も、売り場で目に見えるようになった。

支払い方法の多さが、列を止める最大の原因になる

専用レジの行列が進まない理由は、機械の速度よりも客側の手順にある。QRコード、交通系IC、クレジットカードのタッチ決済、ポイントアプリの提示など、一人が複数の操作を重ねる。アプリの起動待ち、残高不足、通信の不調、読み取りエラーのどれか一つで、後ろの客は足止めされる。混雑する夕方は、この一人分の遅れが数分に膨らむこともある。

現金のレジなら、残高が足りなくても財布から小銭を出して解決できる。専用レジには、その逃げ道がない。失敗した客は焦り、後ろの客は苛立ち、店員の呼び出しで列はさらに止まる。連鎖が起きやすい構造だと言える。

満足度を決めるのは「並ぶ前に分かるか」である

ここで独自の視点を一つ挙げたい。行列への不満は、長さそのものより「見通しの悪さ」から来る。遊園地のアトラクションが「待ち時間60分」と掲示すれば、客は納得して並ぶ。空港の自動チェックイン機も、列の手前で案内係が行き先を振り分けるから混乱が少ない。

専用レジでも同じである。対応する支払い方法のロゴを列の手前に大きく掲示する。床の色で列を分ける。声かけの係を置く。こうした入口の工夫で、並び直しの多くは防げる。機械の性能を上げるより、安上がりで効果が高い。

現金対応との組み合わせが今後の現実解になる

海外では、セルフレジの見直しも進んでいる。英国の食品スーパーBoothsは2021年にセルフレジを撤去し、有人レジに戻した。日本は商品登録を店員が行い、支払いだけを客が機械で行う「セミセルフ」が広く普及しており、事情は異なる。それでも、支払いを完全にキャッシュレス専用に絞る運用は、高齢の客や子ども連れ、スマートフォンを持たない客を置き去りにしやすい。

今後は、専用レジと現金対応レジを併設し、客が迷わず選べる案内を整える形が現実的だろう。キャッシュレスの比率が上がり続けても、現金の需要はゼロにならない。店員を減らす目的で専用化しても、案内や呼び出しの人手が増えれば本末転倒になる。

ビジネスへの影響

まず入口の案内を見直す

専用レジを運営する店が最初に着手すべきは、機械の入れ替えではなく案内表示である。対応する支払い方法の一覧を、列に並ぶ前の位置に置く。専用レジと現金対応レジの区別を、色と文字の両方で示す。費用はのぼりや床シールの数万円程度で済む場合が多い。

あわせて、店員が列の途中で声をかけ、使えない客を早めに別の列へ案内する運用も有効だ。客の「並んだのに」という不満を、問い合わせや口コミの低評価に変えない効果がある。

専用化の目的を人件費だけに置かない

セルフレジの導入理由は、人手不足への対応が多い。ただ、専用レジを増やして有人レジを絞ると、現金客が少数のレジに集中し、別の行列ができてしまう。高齢の常連客が多い店では、特に反動が大きい。

レジのデータで客層ごとの支払い手段の割合を確認し、専用レジの台数を決めるのが筋である。1人あたりの会計時間、呼び出しの回数、並び直しの件数を、時間帯別に1〜2週間記録する。呼び出しが特定の支払い方法に偏っていれば、そこが改善の優先点だと分かる。レジ係の人数を減らす前に、この計測を行いたい。

客に事前の備えを伝える

利用者側にもできる備えがある。支払い手段を二つ以上持つ。アプリは並ぶ前に起動し、残高を確認する。列の混み具合より、自分の手段が使えるかを先に確かめる。これだけで並び直しはかなり減る。

店はこの情報を、公式アプリやレシートの裏面、店頭ポスターで客に伝えられる。客が準備を整えて来る店は、列の流れも良くなる。専用レジの成否は、機械の性能だけでなく、客との約束事をどれだけ分かりやすく示せるかで決まる。

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